ゴルフはタフなスポーツだった

7月19日の夜10時頃から見始めた、全英オープン。2アンダー前後に7人から8人がひしめいて、ついつい最後まで見てしまいました。
メンタルの強さはすごい
とにかく、すごいなぁと思ったのは、とてつもないメンタルの強さ。パーから3アンダーの間に何人もがいるけれど、簡単にバーディーが取れるホールはほとんどなし。
つまり、大事に大事にパーをひろっていって、ここぞというときにチャージしてバーディーを狙うしかないのです。ラウンドリポーターの青木功さんが「いやー、しびれるパットの連続だ」と何回か言っていました。つまり、きっちりとパーをセーブしていかないと、ズルズルいきかねないからです。
どんなにショットがぶれても、ラフに入っても、グリーンのパーオンができなくても、なんとかリカバーしていくのです。それも、リーダーボード上位に載っている選手すべてです。
他の選手がどうなのかということではなく、いま目の前にあるボールと、そのボールが置かれている状況、そしてコースに集中しているのです。たまたま運良くイーグルを取ったからといって浮かれるわけではなく、パーパットをはずしてボギーになっても、次のホールのティーに着くまでに冷静さを取り戻します。
これだけチャンピオン争いに絡む選手が多いと、カメラは頻繁に切り替わります。あまりやられると集中して見られないのが普通ですが、どれも文字通り「しびれるパット」と「しびれるショット」ばかり。
それを追っていくうちに、気がつくと午前3時を回っていました。
強風とものすごいラフ(というよりブッシュ)にむずかしい距離ばかりのホール。さすがに、4時間近く緊張を保つのはむずかしいのか、一時はトップに立った選手が脱落し、チャージをかけてきた選手が脱落。
そのなかで集中を切らずに18番でバーディーをねじこんだシンクのメンタルは、ほんとうにすごい。
そして、59歳の大ベテラン、ワトソンも、とちゅうで崩れかけたにもかかわらず、常に冷静にプレーして17番までトップを守り続けたのも、やはり平常心というか不動心。つまりはメンタルの強さを感じさせてくれました。
72ホール目からは体力勝負だった
最終ホールで、ワトソンはグリーンをオーバー。返しのパットはチャージするもオーバーで、ボギー。2アンダーとなって、シンクに並ばれてプレーオフとなりました。
実は、4日間72ホール目は、59歳でしかも昨年に股関節の手術をしているワトソンの体力が、ギリギリだったのではないでしょうか。ショットがブレたのは、明らかに踏ん張りがきかず、腕と上半身のリードで打ったためのように見えました(打った瞬間ではなく、ビデオのスローで見たのですが)。
3アンダー、2打差ならまだしもシンクがバーディーで2アンダーの1差。ボギーではダメで、パーセーブが絶対条件です。プロならなんでもないようなことなのですが、やはりそうではなかったようです。
よく考えると、18ホール7000ヤードっていうことは、それ以上の距離を歩いてきたということです。しかも、平らな舗装路ではなく、起伏はあるし、凸凹。そのうえに強風と寒さ。そのうえ、5時間近くも立ちっぱなしですよ。
オーバーしてしまった、カラーからのショット。ワトソンはPWではなくパターを使いました。ボールを浮かせてコントロールするだけの踏ん張りや握力、腕力のコントロールがきかなくなっていたのではないでしょうか。
迷うことなく選んだパターは、4日間のワトソンの最大の勝負だったのだと思います。けっきょくは2パットでボギー。
この時点で、ワトソンの中では「ホールアウト」だったのではないでしょうか。
ただし、それはメンタルが切れたのではなく、体力が切れたためだと思います。
4日間のトーナメント、そのまえの準備や練習、そしてさらにプレーオフ。39歳のシンクは、ホールアウト後の待ち時間というハンデはあったにしても、体力ばりばりでワトソンを待ちかまえていたのです。
4日目の最終18番。トーナメントの72ホール目は、続くプレーオフとともにメンタルよりも体力の勝負になっていたのです。
ワトソン千両役者!
プレーオフの第一番、5番ホールでシンクを待っているワトソンは、まさしく千両役者でした。凍えないようにポケットに手を入れ、コースを見るのではなくまわりの風景を楽しんでいるようでした。
「ここからは付録だ。精一杯プレーをして、お客さんに楽しんでもらおう」
と考えているかのように思えました。もちろん、負けるつもりではなかったでしょう。でも、自分の体力は自分ではっきりとわかっていたはず。
そこで逃げも隠れもできない、誰かに代わってもらうわけにもいかない。それがゴルフです。
強風の中、コントロールがきかないショット。17番のバンカーからのリカバリーで見せ場はつくりましたが、18番はまったく抑えが効かなくなっていました。
でも、ワトソンの右に左にぶれた18番のショットは、それぞれのギャラリーのそばにボールを飛ばして、そばでみんなに看てもらおうというサービス精神の現れだったのではないでしょうか。
中継で、コースマーシャルというのでしょうか、審判のような人に、フェンス際からのショットを打つ前に「次はあっちへ打つよ」というように反対側を見ながら話していたように見えたのです。その顔は、少なくとも自分の力はすべて出し切ったし、できる限りのことはしたという満足感がうかがえました。
タイガーや石川僚は、まだまだ若い。タイガーでさえ、いらだった仕草をみせた今年の全英オープン。
それだけに、ワトソンの強さがきわだちました。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック